改めまして、山﨑史子です。
この書籍には、トレーナー、インストラクター、運動系指導者が、自分の教えている人たちに物足りなさを感じた時に知りたい内容が書かれています。
今、教えている人たちは自分についてきてくれるしありがたい。でも、本当はもっと違う客層の人たちを相手にしたい。もっともっと自分にふさわしい教えるべき人たちはいるんじゃないか?そんなことを思い始めたら、この書籍はその疑問に応える内容になっているはずです。
また、イベント参加や催し物などの出演が多く、いろいろとしがらみの中で参加するものが多いにも関わらず、いまいちそれが収益に結びついていない。そんな状況になっている方にも必見の内容になっています。
かく言う私も以前は、そういう時期がありました。教えている人たちには、もっともっと向上心を持って打ち込んでほしいのに、こちらの気持ちとは裏腹に温度差があって、どんどんやる気になって私のサービスを購入してくれない。サービス向上のためにと、いろいろと挑戦してみるのに忙しくなるだけで、結果につながらない。
でも「もっと本気の人たちを集めることができたらそれが実現するはずだ!」そう信じて、トレーナーやインストラクターの業務に打ち込んでいた時期もあります。
それで今はどうかというと、私の教える客層はガラリと変わっています。私が今教えている人たちは、実はトレーナーやインストラクターなどの指導する側の方々になっています。それに伴って以前抱えていたような、「私が教える人が成長してくれない!」とか「本気になってくれない!」といった悩みは完全に解消され、それどころか今私が教えている方々は本気で切実な方ばかりです。
では、どうやって教える客層を変えることができたのか?この書籍では私の経緯をたどりながらその方法を解説していきます。ぜひ最後までお付き合いください。今まさに自分の客層を変えたいと思っている指導者の方のヒントになるはずです。
書籍を読みやすくわかりやすくするために小説形式で展開していきますので、物語を読みながらその極意を知ってみてくださいね。
第一章
「自我の発生」
Zumba(ズンバ)を教えるインストラクターである和美(50歳)は悩みを抱えていました。
数カ所掛け持ちで教えているフィットネスクラブと、自分の教室でZumbaを教えているので、ある程度の生徒さんがいてくれるものの、今のやり方に満足がいっていないからです。
ありがたいことに生徒さんはたくさんいて、生徒さんたちは、「レッスンをもっと増やしてほしい!」と言ってくれる。でも一方で、Zumba以外のさまざまなイベントにも参加していて忙しく、実労の割には収入も少なく、それでいていろいろな舞台に駆り出されてしまう。
人気がありカリスマ性があるからと、広告塔のように扱われている自分にちょっと嫌気が差しかけていた頃、自分の教室で教えている生徒さんから言われた言葉に、いよいよ自分のやりたいことがなんなのか、わからなくなっていたのでした。
そんなことを生徒さんから言われたことがストレスになっていた時に、さらにその生徒さんがスポーツジムでトレーナーをしている真実さんに言いつけたらしく、彼女まで私にこう言ってきたのでした。
実は同じようなことを他のジムでもトレーナーの人から言われたばかりだったのでした。
同じトレーナーの立場の真実さんから上から目線で言われた感じがして、むかっとしました。
でも、私がレッスンを休みがちになったには理由があって、それはとあるイベント会社の社長に「和美先生、イベントでメインを張ってみませんか?」と誘いを受けたことがきっかけだったのです。
その社長、マイケル鈴木さんは、さまざまなイベントを手掛けるイベントプロデューサーで、自分のイベントにZumbaのステージイベントも取り入れたいとのことで、私をメインの出演者に抜擢してくれて、それ以来、さまざまなイベントに呼ばれるようになり、それに伴いレッスンの時間とバッティングするようになっていきました。
でも、ステージの壇上に立って多くの人が注目してくれるのは気持ちが良く、ついつい夢中になり、こちらの仕事を優先するようになります。
ただ、そのイベント出演は、収入という面では大した金額ではなく、忙しさの割には利益が少ないため、本当は収入のためにもっとレッスンしなければいけないのに、ステージに立っている自分の方が自分らしく思えて、ついついレッスンを軽んじてしまう。事実、私の担当するステージは人気を博し、その度にマイケルさんから褒められたりすると嬉しくなっていく。
そんな時、同じジムで教えているベリーダンスの先生、志保さんが声をかけてきます。志保さんは以前から私に憧れを持ってくれている先生で、いつも嬉しそうに話しかけてくれるかわいい後輩でもありました。
こんな感じで志保さんにマイケル鈴木さんを紹介し、志保さんも彼が企画するイベントにベリーダンスの部門で出演することになりました。
マイケル鈴木さんの集客力はすさまじく、私たちはどんどんイベント出演が増えて、そっちの方の仕事がますます増えていきます。
「10ステージか…もうレッスンをやってる場合じゃないな。思い切ってストップしちゃうか。」
私はジムのスタッフにレッスンの大幅なカットを申し入れ、イベント参加に専念することにしました。すると、それを聞きつけた真実さんがまた、私に話しかけてきます。
とは言ったものの、確かに収入が減るのは事実。次にマイケル鈴木さんに会う時に出演料の交渉をしてみようかな、そんなことが頭によぎったのでした。
私がジムのレッスンを減らしたことをマイケル鈴木さんに告げると、マイケル鈴木さんの鼻息はさらに荒くなります。
こうして出演料の値上げの話は軽くあしらわれ…一方で、イベント出演が増えるにつれ人気者になっていることに満足してしまう自分もいて、マイケル鈴木さんにうまいこと乗せられて、気づけばイベント出演一辺倒のような働き方になっていき、いよいよ生活が苦しくなっていきます。
さらに、私に憧れてくれていたベリーダンスの先生、志保さんも私を真似てイベント出演を増やし、レッスンを減らしたために、志保さんも同じような状況になり、誘った私としては余計に申し訳ない気持ちになっていきました。
「よし!今日こそ出演料を上げてもらおうぞ!」
私は再度、マイケル鈴木さんに交渉をします。
マイケルさんの本音が垣間見えた感じがしてショックでした。
「私はただのピエロだったのか…。」
ジムで行っていたレッスンの枠も減らし、イベントの出演を増やしたことでどちらも変えられない状況。蓋を開けてみればチヤホヤはされたけど、収入は減り、もともと自分が作ってきた居場所はなくなっている。
「この先、どうすれば…。」
そんな八方塞がりの状態で少なくなったジムでのレッスンを終えたロッカールーム。暗い顔をしていた私にあの真実さんが話しかけます。